『視聴熱』および『SNS熱狂指数』とは?ドラマ人気を測る新指標と調査方法

『視聴熱』および『SNS熱狂指数』とは?ドラマ人気を測る新指標と調査方法

視聴熱しちょうねつ』とは、KADOKAWAが実施するテレビドラマなどの作品の人気度を測る手法として、新たに注目されている指標である。(ザテレビジョンを運営するKADOKAWAの登録商標である)
既存のテレビ視聴率とは違い、SNSなどのインターネットの反響を重視しているのが特徴である。当サイトでは独自に集計した『SNS熱狂指数SNSねっきょうしすうを発表している。

SNS熱狂指数の企画背景

テレビ視聴率とは異なるKADOKAWAの「視聴熱」などの指標が注目されるようになった背景に、2018年に放送されたテレビ朝日「おっさんずラブ」がある。
「おっさんずラブ」は、おじさん達のピュアな恋愛をコミカルに描いた作品であるが、放送開始直後からその魅力にどハマりする人が続出し、SNSにポジティブな感想が多数書き込まれた。
その熱量は回を重ねるごとに増加し、終盤の「第6話」の放送時にはTwitterで「#おっさんずラブ」がトレンド世界No.1を記録した。「視聴熱」というKADOKAWAの商標が一般にも知られるようになったのはこの頃である。

テレビ視聴率が完璧でない

「おっさんずラブ」は2018年最も成功したドラマ作品と言われるが、いわゆるテレビの“視聴率”はそうでもなかった。通常人気ドラマの視聴率となると10%台後半、ヒットドラマとなると20%以上を記録することもある。
しかし「おっさんずラブ」の視聴率は3〜4%台、最終的にも5.7%だった。深夜時間帯の放送だったことを割り引いたとしても、決して高い視聴率だったとは言えない。こうした背景に筆者は見逃し動画配信の普及があると考える。

テレビよりスマホに接することが多い

通信と放送の融合と言われて久しいが、近年は民放各社が揃ってネットの動画配信サービス普及に努めている。民放各社が共同で作る番組見逃し・無料ポータル「TVer(ティーバー)」は1500万ダウンロードを超えて人気アプリとして定着してきた。
既に若い世代ではテレビを持たないユーザーも多い。基本スマホで生活が完結し、見たいドラマがあればTVerの見逃し配信で視聴すると言った具合だ。つまりリアルタイムで放送を見ている人だけが視聴者ではない時代になっている。
最近は録画データの再生を測る「タイムシフト視聴率」もあるが、調査手法は既存の視聴率調査をベースにしている。やはりテレビで視聴することが前提であり、スマホネイティブに対応したものではない。
なお「おっさんずラブ」は、見逃し動画配信の再生回数がテレ朝ドラマ史上最高だったようだ。こうしたことから、熱狂度を測る上では「ネットの見逃し動画配信の視聴者数」をベースにした方が実態を反映していると言えそうだ。

アクティブな視聴者がどれだけいるか

さらに“視聴率”の問題点は、熱狂的な視聴者もそうでない視聴者も同列に扱わてしまうことだ。視聴率カウント機器が導入されている家であれば、テレビの前で真剣に見ているユーザーも、暇つぶしになんとなく見ているユーザーも同列だ。
一方、SNSにまで書き込みをするユーザーは、作品にとって優良顧客である可能性が高い。こうした優良顧客がどの程度いるかを作品本来の評価指標として重視した方が自然だ。
そこで、当サイトでも視聴者の“熱量”を測るために、SNS上の書き込み数を集計して得点化できないだろうかと考えた。

調査手法

当サイトでは独自の調査手法によってSNS熱狂指数を数値化している。当サイトが提唱する「SNS熱狂指数」は、『フォロワースコア』『エンゲージメントスコア』の2つの要素からなっている。

フォロワースコア

『フォロワースコア』は、その名の通り公式SNSのフォロワー数や、TVerのマイリスト登録者数を得点化したものである。これにより、なんとなく視聴ではなく積極的に作品の情報を取りに行くユーザー数を把握することができる。

【見逃し配信が無い、SNSアカウントが無い場合】
見逃し配信やSNSアカウントが無い場合(Twitterのみでインスタが無い場合なども含む)は、最低限取得できる「フォロワースコア」を集計、その後、視聴者のツイート数などと比較して過去データ同基準から「みなしフォロワースコア」を算出して得点化する。

エンゲージメントスコア

『エンゲージメントスコア』は、SNS上の反響を得点化したものである。主にはTwitterのつぶやき数を重視しており、ある一期間において作品に関連するキーワードがどの程度投稿されたかを調査して反映する。
さらにAI分析ツールの結果からポジティブワードネガティブワードを判別し、その割合に応じてバイアスをかける。つまり、ドラマが好評ならスコアが加算され、不評なら減算されることになる。加えて公式アカウント(Twitter、Instagramなど)に対するエンゲージメント(コメント、リツイート、いいね)も得点化している。

単位(%)

通常、熱量を表す単位には「ジュール」や「カロリー」が使用される。しかし例えばSNS熱狂指数を「1,000kcal」などと表示したところで、それが多いのか少ないのかはイメージしづらい。どうにかして視聴率のように%(パーセント)で表せないか?
そこで当サイトでは「フォロワースコア」と「エンゲージメントスコア」を、ある一定の「過熱基準」で割ることで、視聴率と同じように%(パーセント)で示せるように工夫をした。これにより得点が過熱基準(100%)に近づくほど「HOT」と判断できる。
ただしこの手法ではSNS熱狂指数が100%を超えることも想定される。試しに2019年1月26日、テニス大坂なおみ選手が全豪オープンを制覇した時のTwitterを分析、シュミレーションをしてみたところ、SNS熱狂指数が余裕で100%を超えた。
テレビ視聴率では100%を超えることはありえないが、SNS熱狂指数は100%を超えれば「TOO HOT!」、視聴者が熱狂していることが一目瞭然となる。

終わりに

テレビ視聴率に代わる指標はまだまだ開発途上である。当サイトの他にも老舗のザテレビジョンが「視聴熱ランキング」を紹介している。
当サイトではザテレビジョンと重複しないように『SNS熱狂指数』と呼ぶことにしている。今後は調査手法を含めてアップデートを重ねていくことになるだろう。ただし垂直水平に比較するため、同クール内での調査手法は変えないつもりだ。視聴者の反響がどのように数字として現れるか、テレビ視聴率SNS熱狂指数に異なる傾向が読み取れるか、自分自身の興味もある。
開発途上の『SNS熱狂指数』であるが、結果についてはあまり熱しすぎず、暖かく見守って頂ければ幸いである。